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「人が足りない」と書いた上場企業は60.6%、対策にAIを挙げたのは7.1%——3,817社の有価証券報告書が映す、会社と個人の時差

2026-10-19 AI活用・働き方

「人が足りない」の隣に、AIは書かれていない

AIエージェントの業務実装を手がけるゴムマリ株式会社が、2026年10月18日に自社調査を公表しました。EDINETから取得した上場会社の有価証券報告書3,817社分(提出期間2025年10月1日〜2026年10月8日、各社の最新1件)について、「事業等のリスク」と「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の本文を読み、人手不足・人材確保に触れているか、その対策にAIや自動化を挙げているかを集計したものです。

結果はこうなりました。

「人が足りない」と書いた会社は6割。その対策にAIの名前が出てくるのは、そのうち14社に1社です。自動化全般まで広げても、5社に1社に届きません。

困っている会社ほど、AIを答えに挙げていない

従業員規模別(従業員数の記載がない2社を除く3,815社)に並べると、向きがはっきりします。

従業員規模人手不足を挙げた割合うちAIを対策に書いた割合
300人未満66.6%5.3%
300〜999人59.9%6.4%
1,000〜4,999人54.2%8.3%
5,000人以上61.1%10.5%

人手不足を挙げる割合がもっとも高いのは300人未満の会社(66.6%)ですが、AIを対策に書いた割合はもっとも低い5.3%。5,000人以上(10.5%)との差は約2倍です。困っている度合いと、AIを答えとして掲げている度合いが逆を向いています。

業種別では、人手不足を挙げた割合が高いのは情報・通信業(617社中510社、82.7%)とサービス業(561社中436社、77.7%)。一方、人手不足を挙げた会社のうち自動化・省人化まで書いた割合が高いのは建設業(82社中29社、35.4%)と食料品(68社中23社、33.8%)でした。人が足りないと言う業種と、機械に寄せると言う業種は、同じではありません。

「書いていない」は「使っていない」ではない

ここは慎重に読む必要があります。調査主体も、報告書の記載内容がAI利用の有無を示すものではないと明記しています。有価証券報告書は投資家に向けた文書で、現場で何が動いているかを網羅する書類ではありません。関連語を含まない言い回しは集計から漏れるため、実際より低めに出ている可能性も調査側が断っています。

判定の手順も開示されています。該当語を含む文(人手不足系5,565文、AI・自動化系4,880文)を大規模言語モデルで判定し、1社でも該当文があればその会社を計上。無作為抽出した各150文を別のモデルで再判定した一致率は人手不足98.0%、AI・自動化94.7%。該当と判定した641文の再判定では一致率90.2%で、食い違ったもののうち社数に影響する37文は人が全文を読んで決めたとしています。

そしてもう一点。発表元はAIエージェントの導入を事業にしている会社です。「AIがまだ書かれていない」ことが課題として提示されるのは、その立場と整合します。手順が開示されていることと、発表元に利害があることは両立します。どちらも踏まえたうえで残るのは、少なくとも公式な文書のレベルでは、人手不足とAIがまだ結びついていない会社が多数だという事実です。

方針が無い場所で使うと、3つのことが起きる

勤め先が人手不足を課題に挙げながら、対策にAIを掲げていない。その状態で現場の人がAIを使うと、だいたい次のことが起きます。

  1. 成果が「その人の手際」として処理される。 会社の施策ではないので、短縮した時間は評価の材料になりません。
  2. 共有されない。 方針になっていないものは、研修やマニュアルの対象になりません。隣の席で同じ試行錯誤が繰り返されます。
  3. 前提が後から変わる。 ルールが無い状態は、許可されている状態ではありません。

逆の読み方もできます。AIを対策に書いた164社では、AIの運用を設計する役はすでに社内に候補がいます。まだ書いていない会社では、その役が決まっていません。先に手を動かしている人は、社内では希少なほうに入ります。希少であることは、そのまま収入になるわけではありませんが、説明できる形にしておけば交渉の材料にはなります。

自分の側に記録を置く

方針が追いついていないあいだ、活用の説明責任は本人の側にあります。やることは地味です。

60.6%と7.1%の差は、会社の文書が現場に追いついていない幅です。その幅は、個人が黙って埋め続けることもできるし、記録と手順にして見えるところへ出すこともできます。評価の対象になるのは後者だけです。

Blue Aegis株式会社は、規制対応を検証可能にする技術を研究開発し、その成果を特許として保有・提供しています。規制対応でお困りの場面がありましたら、判断がつかない段階でもご相談ください。

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一次出典

本稿は公表資料に基づく整理であり、法的助言ではありません。