AI人材は5年で約3倍、その61.1%は転職ではなく社内異動——450万人の名刺データが映す、肩書きが変わる経路
「AI人材になる」と聞くと、転職して職種を変える絵を思い浮かべる人が多いと思います。実際に肩書きが変わった人を数えると、その経路は逆でした。
Sansan株式会社が2026年10月5日に公表した分析では、過去5年間にAI関連の所属・役職へ変わった人のうち、61.1%が社内異動によるものでした。転職は38.9%です。
名刺という、自己申告ではないデータ
この調査が珍しいのは、アンケートではないことです。名刺アプリ「Eight」に登録された名刺データを、2021年7月31日から2026年7月31日まで追いかけて集計しています。Eightの利用者は450万人以上。
数えているのは、所属または役職に「AI」(前方一致。生成AI、AI活用などを含む)か「AX」(AX推進などを含む)が入っている名刺です。「FAX」「Tax」のような無関係な語は除外されています。
その数は、2021年7月31日時点の1,146人から、2026年7月31日時点で3,479人になりました。2021年比で303.6%、約3倍です。特に2025年から2026年にかけて増加率が加速しているとされています。役職の中では「AIエンジニア」「AIコンサルタント」「CAIO(Chief AI Officer:最高AI責任者)」の伸びが目立ちます。
「AIを使っていますか」と聞かれて答えた数字ではなく、会社が肩書きを刷り直した数です。意識ではなく、人事の結果が出ている。ここがこの調査の強みです。
入口は社外ではなく、社内にあった
経路の内訳はこうなっています。
| AI関連の肩書きに変わった経路 | 割合 |
|---|---|
| 社内異動 | 61.1% |
| 転職 | 38.9% |
6割が社内異動、ということは、AI人材の多くは「外から採ってきた人」ではなく「もともと社内にいた人」だということです。会社にとっては育成の結果であり、個人にとっては、いま所属している会社の中にその椅子があるということでもあります。
転身前の職種を見ると、この読み方がもう少しはっきりします。
| 転身前の職種 | 割合 |
|---|---|
| 企画開発 | 22.5% |
| 営業 | 17.8% |
| 製造・エンジニア | 12.1% |
1位の企画開発に続いて、2位は営業です。技術職だけが流れ込んでいるわけではない。むしろ、業務の内容を知っている人が、AIを担当する側に回っている形に見えます。
読み替えると、やることが3つ出てくる
1. 社内で誰がAIの話を持っているかを調べる。 転職活動より先に、自分の会社でAI関連の部署・役割が新設されていないかを確認してください。社内公募、兼務、ワーキンググループ。61.1%という数字は、その窓口が実在する会社が増えていることを示しています。窓口がなければ、「自分の部署で何に使えそうか」を1枚にまとめて上司に渡すところからです。
2. 自分の職種の知識を、移せる資産として扱う。 企画開発22.5%、営業17.8%という並びは、AIの知識だけで異動が決まっているわけではないことを示唆します。どの業務に無駄があるか、どこで判断が詰まるかを知っているのは現場の人です。AIを担当する側に回るとき、持ち込めるのはその土地勘のほうです。
3. 「使っている」ではなく「変えた」を1つ作る。 社内で手を挙げるとき、効くのは利用歴ではなく実例です。どの作業に何分かかっていたのが何分になったか、誰の手間が減ったか。小さくていいので、他人が再現できる形で1つ残しておく。肩書きが変わった3,479人も、どこかでその1つを見せているはずです。
数字の扱いについて
断っておくべき点があります。この3,479人は、日本のAI人材の総数ではありません。Eightに登録された名刺に限った数で、名刺を登録する人・しない人の偏りがそのまま入ります。また、肩書きに「AI」が入っていることと、その人が実際にAIで成果を出していることは別です。社名や部署名の流行が先に動くことは珍しくありません。
それでも、5年間を同じ基準で数え続けた変化の方向と、61.1%対38.9%という経路の内訳は、自己申告のアンケートでは見えにくいものです。
今週やるなら、1つ目です。社内のイントラや人事の通達を検索して、「AI」「AX」を含む部署名・役割名が増えていないか見てみる。あれば、その担当者が何を困っているかを聞きに行く。入口が社内にあるなら、履歴書を書くより先に、席を立つほうが近い。
Blue Aegis株式会社は、規制対応を検証可能にする技術を研究開発し、その成果を特許として保有・提供しています。規制対応でお困りの場面がありましたら、判断がつかない段階でもご相談ください。
相談する一次出典
- Sansan株式会社(PR TIMES)「Eight、名刺データが示す「AI時代の肩書き調査」を発表」(2026-10-05)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000901.000049627.html
本稿は公表資料に基づく整理であり、法的助言ではありません。