AIで文章は書くのに、書類は自分で触っている——355名調査が映す73.1%と23.3%の差
AIに文章を書いてもらうのは、もう珍しいことではなくなりました。メールの下書き、資料の骨子、長い報告書の要約。この辺りは多くの人が通ってきた道だと思います。
ところが、その文章が「ファイル」になった途端に手が止まる。PDFにして、ページを並べ替えて、必要な部分だけ抜き出して、またWordに戻す。ここだけは今も自分の手でやっている——心当たりのある人は少なくないはずです。
その偏りが数字で出た調査が公表されました。
AIの使い道は「書く」に集中している
株式会社ワンダーシェアーソフトウェアが2026年9月7日に公表した調査です。PDFを編集するユーザー355名を対象に、2026年6月25日から30日にかけてインターネットで実施されました(別に、全国22〜59歳の在職者2,000名への調査も同時に行われています)。
この355名のうち、生成AIの利用経験があるのは73.0%。「日常的に使用している」が26.5%、「たまに使用している」が37.5%でした。
注目したいのは、その人たちが何に使っているかです。
| 生成AIの用途(利用者ベース) | 割合 |
|---|---|
| 文章作成 | 73.1% |
| 翻訳/調べもの・情報収集 | 68.3% |
| 要約・校正 | 63.0% |
| 文書・ファイル作業の自動化 | 23.3% |
上の3つは、どれも「言葉を扱う仕事」です。そして最後の1つだけが「ファイルを扱う仕事」で、そこに3倍の開きがあります。
同じ人が、同じAIを、同じ日に使っているのに、用途が片側に寄っている。これは能力の問題というより、単に「そっちにも使える」と思い至っていない状態に見えます。
面倒だと分かっている作業ほど、手元に残っている
もう少し具体的に見ていきます。この355名が書類作業で感じている不満は、次のとおりでした。
- 時間がかかる:42.3%
- 繰り返しが多い:33.5%
- 手作業のためミスが起きやすい:28.2%
- 複数のツールを行き来する必要がある:24.2%
- 特に不満はない:23.4%
そして「繰り返しが多い定型的な作業」として挙がったのは、PDFの結合・分割・ページ整理が50.4%、PDFをWord・Excel・画像に変換するのが40.3%、スキャンしたPDFのOCR処理が27.6%、文字入力・注釈の追加が25.1%でした。
「時間がかかる」「繰り返しが多い」「手作業でミスが出る」。これは、自動化に向いている作業の条件をそのまま並べたような内容です。本人も面倒だと自覚している。にもかかわらず、そこにAIを使っている人は23.3%にとどまっている。
前提となる2,000名の調査でも、同じ方向の数字が出ています。PDF利用者の80.6%は「閲覧・確認のみ」。文字入力や注釈の追加が49.8%、結合・分割・変換が43.4%、編集やOCR・電子署名などが27.4%です。多くの人にとってPDFは、開いて見て閉じるものになっています。
頼み方を一段だけ上げてみる
AIにどこまでやってほしいかを聞いた項目も出ています。「簡単な指示で複数の作業を自動で完了してほしい」が38.0%、「指定した具体的な作業を実行してほしい」が36.6%、「質問への回答や要約だけで十分」が25.4%。合わせて7割以上が、答えを返すだけでなく作業そのものを進めてほしいと考えています。
期待はある。使い道が追いついていない。この差を埋めるなら、今週できることは3つくらいです。
- 依頼を文章で終わらせず、成果物の形まで書く。 「要約して」で止めずに、「見出し付きで箇条書き、そのまま資料に貼れる形で」まで指定する。出力の後始末が減ります。
- 週に1回以上やっている手作業を、1つだけ書き出す。 毎週の請求書のページ並べ替えでも、議事録PDFからの転記でもかまいません。1つ選んで、その手順をAIに説明してみる。やり方が変わらなくても、どこが機械に渡せる部分かは見えます。
- ツールの往復を数える。 不満の24.2%が挙げた「複数のツールを行き来する」は、地味ですが積み上がります。1つの作業で何回画面を切り替えているか数えると、削る場所が具体的になります。
この数字の読み方について
2点、付け加えておきます。
1つは、対象が「PDFを編集するユーザー」355名だということです。書類仕事の比重が高い人に寄ったサンプルであり、働く人全体の平均ではありません。
もう1つは、この調査を実施したのがPDF編集ソフトを提供する事業者だという点です。「文書作業の自動化が進んでいない」という結論は、その事業の方向と一致します。数字そのものを疑う理由はありませんが、どこが強調されやすいかは踏まえて読むのが妥当でしょう。
そのうえで、「AIの用途が言葉を扱う仕事に偏っている」という傾向自体は、この1本の調査に限った話ではありません。使い道の幅が成果の差につながることは、これまで複数の調査で繰り返し出てきています。
新しいツールを増やす必要はありません。すでに開いているAIに、今まで頼んでこなかった種類の仕事を1つ渡してみる。今週の変更としては、それで十分です。
Blue Aegis株式会社は、規制対応を検証可能にする技術を研究開発し、その成果を特許として保有・提供しています。規制対応でお困りの場面がありましたら、判断がつかない段階でもご相談ください。
相談する一次出典
- 株式会社ワンダーシェアーソフトウェア(PR TIMES)「【オフィスワーカーのPDF・生成AI活用調査】生成AIの利用経験は73.0%も、文書・ファイル作業の自動化への活用は23.3%にとどまる」(2026-09-07)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000973.000020603.html
本稿は公表資料に基づく整理であり、法的助言ではありません。