「業務時間が減った」は日常利用78.1%・たまに利用77.4%、「売上に貢献」は30.1%対12.9%——200人調査が映す、頻度で開く差と開かない差
生成AIを仕事に入れて最初に起きるのは、たいてい「時間が浮く」ことです。メールの下書き、議事録の要約、資料のたたき台。手を動かす時間が短くなる感覚は、使い始めて数日で来ます。
問題はその次です。浮いた時間が収入やコストに変わるかどうかは、どうも別の話らしい。創業手帳株式会社が2026年10月20日に公表した調査に、その分かれ目が数字で出ていました。
「時間が減った」は約8割、「売上に貢献」は約2割
調査は創業手帳の会員(起業準備中の人、個人事業主、法人経営者など)を対象に、2026年9月1日から9月30日までインターネットで実施されたものです。有効回答は200人。
業務で生成AIを使っている人は77.0%でした。内訳は日常的に利用が39.5%、たまに利用が37.5%。使ったことがないが22.0%、過去に使ってやめたが1.0%です。
見たいのは、その先にある「効果」の内訳(複数回答)です。
| 感じた効果 | 割合 |
|---|---|
| 業務時間の削減 | 77.8% |
| スキル補完・内製化 | 60.7% |
| 外注費・人件費の削減 | 25.2% |
| 事業成長・売上貢献 | 22.2% |
時間が浮いたと感じた人は約8割。事業の成長や売上につながったと答えた人は約2割。同じ母集団のなかで、55ポイント以上の開きがあります。
頻度で開く差と、開かない差
この調査がおもしろいのは、「日常的に使う人」と「たまに使う人」を分けて比べているところです。
| 感じた効果 | 日常利用 | たまに利用 |
|---|---|---|
| 業務時間の削減 | 78.1% | 77.4% |
| 外注費・人件費の削減 | 32.9% | 16.1% |
| 事業成長・売上貢献 | 30.1% | 12.9% |
業務時間の削減は、ほぼ横並びです。差は0.7ポイントしかない。月に数回しか使わない人でも、使った場面ではちゃんと時間が浮いている。
ところが売上貢献は30.1%対12.9%で約2.3倍、外注費・人件費の削減も32.9%対16.1%で約2倍。頻度で開く差と、開かない差がはっきり分かれています。
理屈はそう複雑ではなさそうです。時間の削減は、1回の作業のなかで完結します。30分かかっていた議事録が10分で終われば、その場で実感できる。回数が少なくても起きる。
一方、売上やコストは積み上がった先にしか現れません。壁打ちを1回やって売上が動くことはまずない。毎日の作業に入り込んで、空いた時間が別の仕事に回り、その仕事が結果を出すまでの距離があります。頻度が足りないと、その距離を渡り切る前に止まる。
使っている工程に、差の出どころがある
用途(複数回答)の並びも見ておきます。
- 新規事業のアイデア出し・壁打ち 73.0%
- 市場調査・競合分析・トレンド収集 55.3%
- 営業メール・議事録・要約など 43.3%
- 事業計画書・プレゼン資料の作成 41.8%
- Web記事・SNS・メルマガなど 40.4%
- 契約書のリーガルチェック補助 19.1%
- 採用活動 5.7%
1位が「アイデア出し・壁打ち」で、文章を書かせる用途を上回っています。経営者・起業家という回答者層を考えれば自然ですが、会社員やフリーランスに置き換えても示唆はあります。出力を代わりに書かせる使い方と、考える途中で相手役にする使い方では、積み上がるものが違う。前者は時間が浮いて終わりやすく、後者は打ち手の数そのものを増やします。
課題(複数回答)の1位は「期待通りの精度・回答が得られない(プロンプト作成の難しさ)」で54.6%。以下、機密情報・セキュリティへの懸念42.0%、どの業務に使うべきかわからない25.2%、費用がかさむ16.0%、社員・チームへの定着・教育が難しい6.7%と続きます。
費用を課題に挙げた人(16.0%)より、聞き方を課題に挙げた人(54.6%)のほうが3倍以上多い。ちなみに有料プランの利用は全体で51.6%、日常利用者では68.4%、たまに利用者では33.8%でした。
数字の読み方
発表元自身が、この調査は会員による任意回答であり、日本の起業家・経営者全体の傾向を示すものではないと断っています。回答者200人、設問によって母数も変わります。
もうひとつ、効果・用途・課題はいずれも複数回答で、因果を示すものではありません。日常的に使っているから売上に効いたのか、売上に効いた手応えがあるから日常的に使うようになったのか、この数字だけでは決められない。おそらく両方向に働いているはずです。
それでも「時間削減だけが頻度と無関係に高止まりしている」という形は、自分の使い方を点検する材料になります。
時間が浮いたあとの置き場所
この調査から、明日に持ち帰れそうなことを3つ。
浮いた時間の行き先を、先に決めておく。 議事録が20分短くなったとして、その20分が次の会議の準備に吸われるなら、手応えは「少し楽になった」で止まります。削減のたびに何に使うかを決めている人と、決めていない人の差が、22.2%と77.8%の開きの一部ではないかと思います。
月に数回ではなく、毎日触る工程を1つ作る。 頻度で差が出たのは売上とコストの側でした。広く浅く試すより、自分の仕事で毎日必ず発生する工程を1つ選び、そこだけ徹底的にAIに通すほうが、積み上がりは早い。日常利用者の有料プラン利用が68.4%なのも、毎日使うから投資判断がついた、という順序でしょう。
壁打ちを「出力」ではなく「入力」に使う。 完成物を書かせるのは時間削減です。企画の前提を疑わせる、顧客の反論を10個出させる、自分の案の弱点を挙げさせる。これは判断の質を上げる使い方で、頻度を重ねるほど効いてきます。1位が壁打ちだったことを、そう読んでおきたい。
もちろん、これで収入が増えると保証できる数字ではありません。この調査が言えるのは、時間が浮くことと成果が出ることは同じではない、そして両者を分けている変数のひとつが頻度らしい、というところまでです。
ただ、それだけでも十分に実用的だと思います。「AIで効率が上がった」で止まっている感覚があるなら、浮いた時間の行き先と、触る頻度。点検する場所は、その2つです。
Blue Aegis株式会社は、規制対応を検証可能にする技術を研究開発し、その成果を特許として保有・提供しています。規制対応でお困りの場面がありましたら、判断がつかない段階でもご相談ください。
相談する一次出典
- 創業手帳株式会社(PR TIMES)「【起業家・経営者200人調査】77%が生成AIを業務で利用!約8割が「業務時間の削減」を実感」(2026-10-20)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000095.000013517.html
本稿は公表資料に基づく整理であり、法的助言ではありません。