「AIで生産性が上がった」64.9%、検証の時間が増えた39.4%——794名調査が映す、AIの後ろに残った工程
減らした人員が、戻っている
「AIを入れたから人を減らす」という話には、たいてい続きが報じられません。その続きに当たる数字が出ました。
人材サービスのSThree株式会社が2026年10月15日に公表した日本市場の分析によると、過去12カ月のあいだにAI導入に直接関連した人員削減を経験した組織は、回答者794名のうち13.2%でした。そして、その削減を経験した105名に限って聞くと、67.6%が「決定の少なくとも一部が撤回された」と答えています。「今後撤回される予定」の18.1%を足すと85.7%です。
調査はYouGovが実施したもので、対象は日本でSTEM分野に従事する成人794名、期間は2026年7月15日〜8月24日。エンジニア、研究開発、技術系の専門職が中心で、働く人全体の姿ではありません。ここは割り引いて読む必要があります。
それでも、AIを理由にいったん縮めた体制が、1年のうちにここまで戻されているという事実は残ります。削減の判断が早すぎたのか、AIで消えると見込んだ仕事が実際には消えなかったのか。後者だとすれば、どの仕事が残ったのかが次の論点になります。
生産性は上がった。それとは別に、増えた工程がある
同じ調査には、AIの効果についての数字も並んでいます。
| 項目 | 割合 |
|---|---|
| AIによってチームの生産性が向上した(業務でAIを使う592名) | 64.9% |
| AI生成物の検証・確認に費やす時間が増えた(794名) | 39.4% |
| AI生成物の修正・手直しに費やす時間が増えた(794名) | 35.4% |
母数が違うので単純には足し引きできませんが、方向ははっきりしています。生産性が上がったことと、検証や修正の時間が増えたことは、同時に起きているということです。
これは矛盾ではありません。下書きを作る工程が速くなり、その代わりに「出てきたものが正しいか確かめる」工程と「違っていた箇所を直す」工程が太った、と読むのが素直です。作業の総量が減ったのではなく、重心が後ろにずれた。削減した人員が戻っているという前半の数字とも、筋が通ります。
補充は効いていない
人手の側はどうか。794名の回答では、退職した技術人材の補充が困難になったが46.6%、未補充のポジションによって業務負担が増えたが41.2%、技術関連のスキル不足でプロジェクトが遅延・中止になったが31.0%でした。今後2年間について、重要な技術人材の定着困難を「重大」または「中程度」のリスクと見ている人は51.6%です。
つまり、増えた後工程を引き受ける人が、そのへんにいるわけではない。これが、いったん減らした体制を戻す動きの背景にあると考えると、話が揃います。
「AIの後ろ」に自分を置けるか
ここから先は、個人の立ち位置の話です。調査が示しているのは、AIが仕事を消したのではなく、仕事の内訳を入れ替えたという状況でした。減ったのは下書きを作る時間、増えたのは検証と修正の時間。そして後者を担える人は足りていない。
需要が増えて供給が追いついていない工程は、評価が付きやすい場所です。収入がすぐ上がるという話ではありませんが、少なくとも「代わりがいる作業」からは離れます。日々の仕事でできることは、たとえばこのあたりです。
- 検証を作業ではなく手順にする。 AIの出力を自分の仕事に通すとき、毎回見るべき点は決まっているはずです。数値の出どころ、固有名詞、日付、前提条件、社外に出せるかどうか。思い出しながら確認している限り、時間は毎回かかります。チェックの項目を一度書き出して、同じ順で見る。
- 直した箇所を記録する。 何をどう間違えたかが溜まると、頼み方の側を直せます。同じ誤りが3回出るなら、それは出力の問題ではなく指示の問題です。
- 「確かめた」と言える範囲を自分で把握しておく。 確認していない部分を確認したことにしない。これは信用の問題で、後工程を任される人かどうかの分かれ目になります。
逆に言えば、検証と修正を毎回の気合いで吸収し続ける限り、速くなった分はそこで食われます。調査の39.4%と35.4%は、その食われ方が珍しくないことを示しています。
増えた工程を手数で引き受け続けるのか、確認の手順そのものを仕組みに落として減らしにいくのか。AIを入れた後に効いてくるのは、おそらくこちらの選択のほうです。
Blue Aegis株式会社は、規制対応を検証可能にする技術を研究開発し、その成果を特許として保有・提供しています。規制対応でお困りの場面がありましたら、判断がつかない段階でもご相談ください。
相談する一次出典
- SThree株式会社(PR TIMES)「日本のSTEM人材調査からAI導入に伴う人員削減を見直す動き ー「STEM Workforce Report 2026」日本市場分析」(2026-10-15)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000149028.html
本稿は公表資料に基づく整理であり、法的助言ではありません。