blueaegis Blue Aegis Inc.

REGULATORY INSIGHT

サイバー対処能力強化法の届出とインシデント報告——基幹インフラ事業者が10月1日から求められていること

2026年10月22日

誰が、いつから、何を示す必要があるか

いわゆる能動的サイバー防御を定めた「重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律」(令和7年法律第42号、2025年5月公布)のうち、基幹インフラ事業者に対する届出・報告義務が2026年10月1日に施行されました。

対象は「特別社会基盤事業者」です。経済安全保障推進法に基づいて主務大臣が指定した特定社会基盤事業者のうち、「特定重要電子計算機」を使用する事業者がこれに当たります(法第2条)。義務は二つあり、使っている特定重要電子計算機の製品名や製造者を届け出ること(法第4条)と、その電子計算機に関する侵害事象を報告すること(法第5条)です。

法令と命令が定めていること

EUのサイバーレジリエンス法やNIS2指令のような「24時間」「72時間」の時間単位の期限は置かれていません。ただし「速やかに」の解釈は、事象の類型ごとに目安が示される方向で整理されています。

実務で詰まる点

  1. 報告対象が「侵害事象」だけでなく「原因となり得る事象」まで及ぶため、検知した事象のうち何を報告し、何を報告しなかったかの判断が日常的に発生します。報告しなかった判断の根拠が残っていないと、後から妥当性を示せません
  2. 報告対象は特定重要電子計算機に関する事象に限られます。届出台帳と、監視対象の資産台帳・ログの紐付けがないと、検知した事象が報告対象の機器に関係するのかを即座に判断できません
  3. 届出は導入・変更から4か月以内です。機器の入替えや製品の版の変更を調達・運用部門が把握していても、届出担当に伝わる経路がなければ期限を過ぎます
  4. 第一報と詳報の間で事実認識が変わることは避けられません。各時点で把握していた事実と報告内容の版を残しておかないと、変遷を説明できません

運用でしのぐか、仕組みで担保するか

この種の要請には、二通りの向き合い方があります。ひとつは、手順書を整備し、担当者が確認と記録を行う運用でしのぐ方法。もうひとつは、求められたときに示せる記録が自動的に残る仕組みを組み込む方法です。

前者は着手が早い反面、対象となる手続や担当者が増えるほど破綻します。例外対応が積み重なるうちに記録の粒度が揃わなくなり、後から範囲を特定できなくなるためです。後者は設計の負担が先に来ますが、あとから確認できる状態が保たれます。

当社は、規制対応の適合性を人手の運用ではなく仕組みとして担保する技術を研究開発し、その成果を特許出願として保有しています。詳しくは技術領域をご覧ください。

自社が対象になるのか、対象だとして何を記録しておくべきか。判断がつかない段階でのご相談を歓迎します。該当性の判断は当社側で行いますので、現在の仕組みをお聞かせいただくだけで構いません。

相談する

出典

重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律(令和7年法律第42号)第2条・第4条・第5条(衆議院 制定法律)
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/housei/21720250523042.htm

内閣府「法律の概要」
https://www.cao.go.jp/cybersecurity/pdf/setsumei.pdf

内閣府「施行期日を定める政令」
https://www.cao.go.jp/cybersecurity/pdf/sekoukijitsu.pdf

内閣府「特別社会基盤事業者による特定侵害事象等の報告等に関する命令」
https://www.cao.go.jp/cybersecurity/pdf/meirei.pdf

内閣府「報告様式(告示)」
https://www.cao.go.jp/cybersecurity/pdf/youshiki.pdf

内閣府「汎用品の指定」
https://www.cao.go.jp/cybersecurity/pdf/hanyouhin.pdf

本稿は2026年10月22日時点で確認できた公表資料に基づく整理であり、法的助言ではありません。個別の適用可否については専門家にご確認ください。

施行と改正を追っています。更新はRSSで受け取れます。