AI活用の壁、1位は「何から始めればよいかわからない」32.9%——350名調査が映す、コストより手前で止まる場所
「AIを使えば早くなるのは分かっている。ただ、自分の仕事のどこに入れればいいのかが分からない」。これは個人の悩みのように見えますが、業界単位で聞いても同じ答えが1位に来ることがあります。
株式会社プロガイドが2026年9月26日に公表した小売・外食業界の実態調査では、外食業界にDX・AI推進の課題を尋ねた結果の1位が「何から始めればよいかわからない」32.9%でした。導入コスト25.1%や、費用対効果が見えない21.7%より上です。
350名が答えた、壁の順番
調査は同社が運営する小売・外食業界向けメディア「Store Guide」によるもので、「DX・AI」「HR」「バックオフィス」の3領域について、業界で働く人に尋ねたものです。有効回答は各調査350名、調査期間は2026年9月、インターネット調査です。
DX・AIの課題は、業界で少し違う形に出ていました。
| 業界 | 1位 | 2位 | 3位 |
|---|---|---|---|
| 外食 | 何から始めればよいかわからない 32.9% | 導入コスト 25.1% | 費用対効果が見えない 21.7% |
| 小売 | 活用方法が分からない 18.9% | セキュリティへの不安 18.3% | 導入コスト/システム連携が難しい 各16.0% |
外食では3割超が1つの答えに集まり、小売では2割弱の項目が横並びになりました。散らばり方は違いますが、どちらも首位は「分からない」です。
お金の話は、入口のあとに来る
導入コストや費用対効果は、比べる対象が決まってから出てくる問いです。どの道具をいくらで入れて、何時間の削減と釣り合うか——ここまで来ていれば、判断は計算の問題になります。
「何から始めればよいか分からない」は、その手前にあります。候補が1つも挙がっていない状態なので、計算する材料がありません。順番としては、費用の検討より先です。
個人の仕事でも同じ詰まり方をします。「AIで何ができるか」を調べる方向から入ると、候補は無限に増え続けて決まりません。逆に「自分がこの1週間で繰り返した作業」から入ると、候補は最初から数えられる範囲に収まります。
入口を1つに絞る、3つの質問
任せる先を選ぶとき、次の3つを自分に聞いてみると候補が減ります。
- 直近1週間で2回以上やったか。 1回きりの作業は、指示を書く手間のほうが大きくなりがちです。繰り返している作業なら、指示を書く時間が次回以降に効きます。
- 出来上がりの良し悪しを自分で判定できるか。 自分が読んで直せる分野なら、間違いに気づけます。判定できない分野から始めると、合っているかどうかを確かめる作業が増えます。
- やり直しても損が出ないか。 社内向けの下書き、たたき台、要約は何度でも作り直せます。送信や確定のように取り消せない操作は、あとに回します。
3つとも「はい」になる作業は、たいてい地味です。議事メモの整理、問い合わせ返信のたたき台、同じ形で毎週作る報告——派手ではありませんが、入口としてはここが確実です。
忙しい現場ほど、時間が取れない
同じ調査のバックオフィス領域では、具体的な問題として「人手が足りていない」24.9%、「業務量が多い」24.6%が並び、デジタル化・システム化について34.0%が「あまり/ほとんど進んでいない」と答えています。
人手が足りないから何とかしたい、けれど何とかする時間がない。この循環は、個人の予定表でも起きます。だから現実的なのは、学習のためにまとまった時間を確保することではなく、いまやっている作業の中に混ぜることです。
議事メモを整えるついでに、同じ内容をAIにも整えさせて読み比べる。報告を書くついでに、箇条書きだけ渡して下書きを作らせる。所要は増えて15分程度で、その15分は既にある作業の中にあります。
セキュリティを後回しにしない
小売業界で2位に来たのが「セキュリティへの不安」18.3%でした。これは会社の話に見えて、個人が最初に決めておくべき線でもあります。
顧客名、取引条件、未公開の数字を、勤務先が許可していない場所に貼らない。判断がつかないときは、固有名詞と金額を外し、構造だけを渡して相談する。社内のルールが整っていないことは、持ち出してよい理由にはなりません。
会社の整備を待たずに個人で始められる範囲は、思ったより広いです。ただしその範囲は、自分の手元にある情報だけで完結する作業に限られます。
入口が決まると、次の問いが変わる
32.9%という数字は、「始め方が分からない」が少数の悩みではないことを示しています。多数派なのだとすれば、周りが先に進んでいるように見える焦りは、いったん置いても大丈夫です。
作業を1つ選んで渡してみると、次に出てくる問いは「何から始めるか」ではなくなります。どこまで任せるか、どこで自分が確かめるか、うまくいった指示をどう残すか——費用対効果の計算も、この段階に入ってから初めて意味を持ちます。
入口を1つ決めることと、全体を計画することは別の作業です。先に必要なのは前者のほうです。
Blue Aegis株式会社は、規制対応を検証可能にする技術を研究開発し、その成果を特許として保有・提供しています。規制対応でお困りの場面がありましたら、判断がつかない段階でもご相談ください。
相談する一次出典
- 株式会社プロガイド(PR TIMES)「「人が足りない、AIは使いたい」小売・外食のリアル――DX・AI、人材、バックオフィスの実態調査2026を公開」(2026-09-26)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000150113.html
本稿は公表資料に基づく整理であり、法的助言ではありません。