AIがPCを操作する時代、業務ルールを「十分に文書化」できているのは11.9%——319名調査が映す、詰まるのは手順ではなく例外
AIに文章を書かせるのと、AIに自分の画面を触らせるのとでは、必要な準備がまるで違います。前者は結果を読んで直せば済みますが、後者は動いた後に「何が起きたか」を追いかけることになるからです。
テックタッチ株式会社が2026年9月24日に公表した調査は、その差がどこに現れるかを数字で見せていました。
319名が答えた「AIが画面を操作する」の現在地
調査名は「CUA(Computer-Using Agent)利用実態調査」。対象は従業員数300名以上の企業に勤め、総務、経営企画・経営管理、情報システム、業務改善、DX推進のいずれかに携わるビジネスパーソンで、有効回答は319名です。調査期間は2026年8月14日から19日、IDEATECHが提供するインターネット調査で集めています。
同社はCUAを「AIがPC画面や業務システムを認識し、クリックや入力、画面遷移などを通じて、人に代わって業務を進める仕組み」と説明しています。チャット欄に質問して答えを受け取るのではなく、AIが自分の代わりに画面を動かす段階の話です。
面白いのは認知のねじれ方でした。こうした機能があること自体は67.4%が知っている一方、「CUA」という言葉そのものは46.7%が「知らない」と答えています。名前より先に、実物が現場に入ってきている状態です。
実際の利用は、本番運用で継続的に使っているのが15.7%、試験導入・PoC中が27.0%。用途で最も多かったのは複数システム間の転記・更新で52.7%でした。アプリをまたいでコピーと貼り付けを繰り返す作業から手を付けている、ということです。
「前向き」48.6%と「準備できている」11.9%
今後1年以内の導入・活用について、前向きな回答は合計48.6%(「積極的に進めたい」13.8%、「条件が整えば進めたい」34.8%)。半数近くが、やる方向で考えています。
いっぽうで、任せる前提となる業務ルールを「十分に整理・文書化できている」と答えたのは11.9%。「一部は整理できているが不十分」が39.5%でした。
| 設問 | 割合 |
|---|---|
| 今後1年以内の導入・活用に前向き | 48.6% |
| 業務ルールを十分に整理・文書化できている | 11.9% |
| 一部は整理できているが不十分 | 39.5% |
| 本番運用で継続的に利用 | 15.7% |
やりたい気持ちと、渡せる形の間に距離があります。この距離は、意欲の不足ではありません。手順が頭の中にあるうちは本人には何の不便もなく、外に出す必要がなかった、というだけの話です。
止まるのは手順ではなく、例外
本番運用に進むうえでの障壁として最も多かったのは「例外処理・イレギュラー時の判断が難しい」で36.7%。続いてシステムの権限・承認フローが複雑29.5%、誤操作時の復旧ルールを決めるのが難しい23.2%でした。
上位に並んだのは、どれも「いつも通りではない日」に関することです。毎月同じ形で届く請求書を処理する手順なら書き出せる。困るのは、様式が違う1通が混ざったとき、金額が前月と桁違いのとき、承認者が不在のときです。
普段の作業では、こうした例外に気づいた瞬間に手が止まり、誰かに聞くか、過去の対応を思い出すか、その場で判断しています。この判断は手順書には書かれていません。書かれていないまま渡すと、AIはいつも通りの手つきで処理を続けてしまいます。
個人の作業に置き換える
この調査の回答者は、一定規模の企業で推進側に立つ人たちです。数字をそのまま個人の仕事に当てはめることはできません。ただ、詰まる場所の構造は、ひとりで使う場合も変わりません。
次に何かを任せたいと思ったとき、試せることが3つあります。
- 直近5回を思い出す。 その作業を最後にやった5回のうち、いつも通りに終わらなかったのは何回か。0回なら渡しやすい作業、2回以上なら例外の方が主役の作業です。
- 例外の合図を言葉にする。 「様式が違ったら」「金額が前回の3倍を超えたら」「宛先に社外ドメインが混じったら」。自分が手を止めるきっかけを、条件の形で書き出します。
- 戻し方を先に決める。 誤操作時の復旧ルールを難しいと答えた人が23.2%いました。個人の作業でも同じで、元に戻せる作業から渡すのが安全です。送信、削除、確定のように取り消せない操作は、後に回します。
この3つは、AIを使わない日にも効きます。例外の条件が言葉になっていれば、後輩に頼むときも、自分が久しぶりにその作業に戻ったときも、迷う時間が減るからです。
確認をどこに挟むか
同じ調査では、実行前の確認について「すべて必要」が19.7%、「重要業務のみ必要」が32.0%でした。求める要件としても、人の確認・承認を組み込めることが33.5%で最多、誤操作を防ぐ機能が28.5%、業務ルールを設定しやすいことが28.5%と続いています。
すべてを確認すれば安全ですが、それでは自分が全部見ていた頃と作業量が変わりません。かといって何も見ないと、間違いに気づくのが遅れます。「重要業務のみ」が最多だったのは、この配分を現場が探している最中だからでしょう。
個人でも同じ選び方になります。取り消せる作業は任せきる。取り消せない操作の直前だけ、自分の目を通す。確認の回数ではなく、確認を置く位置で決めるほうが、時間は残ります。
数字の裏側
11.9%という数字は、裏返せば、8割以上の職場で業務ルールの文書化がまだ途中だという意味でもあります。整っていないのが普通、ということです。
だとすれば、先にやっておく価値があるのは大がかりな手順書づくりではありません。自分が繰り返している作業をひとつ選び、直近で例外が起きた場面を思い出して書き留めておく。それだけで、次に何かを任せるときの出発点が変わります。
道具が賢くなるほど、渡す側の説明が問われます。何をどこまで自分で決めるか、どこから先を任せるか。その線は、道具の性能ではなく、自分の作業の把握の細かさで決まります。
Blue Aegis株式会社は、規制対応を検証可能にする技術を研究開発し、その成果を特許として保有・提供しています。規制対応でお困りの場面がありましたら、判断がつかない段階でもご相談ください。
相談する一次出典
- テックタッチ株式会社(PR TIMES)「【CUA(Computer-Using Agent)利用実態調査】今後1年、CUA導入に前向きな回答は48.6%、一方「AIに業務を任せる準備が十分」はわずか11.9%」(2026-09-24)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000455.000048939.html
本稿は公表資料に基づく整理であり、法的助言ではありません。