blueaegis Blue Aegis Inc.

REGULATORY INSIGHT

EU AI法の透明性義務 ― 2026年8月2日から何が求められるようになったか

2026年8月22日

2026年8月2日、欧州委員会のAIオフィスと各国当局によるEU AI法の執行が始まりました。同時に発効した透明性義務は、AIを使ってコンテンツを生成・加工しているすべての事業者に関係します。日本国内で開発したサービスであっても対象になり得ます。

執行が始まった3つの義務

欧州委員会の公式発表では、次の3点が具体的に挙げられています。

1点目と2点目は人間が見て分かる表示ですが、3点目だけは性質が異なります。機械可読であることが要件なので、画面上のラベルでは足りません。コンテンツそのものに、機械が読み取れる形で情報を埋め込む必要があります。

日本企業も対象になります

AI法は、EU域内に所在する事業者だけを対象とする規則ではありません。第2条第1項(a)は、AIシステムをEU市場に提供する者について「当該提供者がEU域内に設立されているか第三国に設立されているかを問わず」適用すると定めています。

さらに同項(c)は、第三国に所在する提供者および利用者であっても、「当該AIシステムが生成した出力がEU域内で利用される場合」に適用対象となると定めています。システム自体がEUに置かれていなくても、出力がEUで使われれば規則が及ぶ構造です。

日本で開発・運用しているサービスであっても、EUの利用者が使う、あるいは生成物がEU域内で利用されるのであれば、適用の可能性を検討する必要があります。

「表示すればよい」という問題ではない

実務上むずかしいのは、義務の内容そのものより、義務を果たしたことを後から示せるかという点です。

ある時点で配信したコンテンツに、確かに機械可読マークが付いていた。そのことを、半年後に第三者に対して示せるか。

表示機能を実装するのは比較的容易です。しかし規制対応は、実装したかどうかではなく、実装が意図どおり機能していたことを立証できるかで評価されます。障害でマーク付与が一時的に失敗していた、設定変更で一部の配信経路が対象外になっていた、といった事態は起こり得ます。そのとき、いつからいつまでどの範囲で欠落していたのかを記録から特定できるかどうかが問われます。

執行の枠組みにおいては、当局からの照会や第三者からの申立てを起点として、事業者側が説明を求められる場面が想定されます。そこで提出できるのは、実装の仕様書ではなく、実際の運用の記録です。

運用でしのぐか、仕組みで担保するか

この種の要請には、二通りの向き合い方があります。ひとつは、手順書を整備し、担当者が確認と記録を行う運用でしのぐ方法。もうひとつは、立証に必要な記録が自動的に残る仕組みを組み込む方法です。

前者は着手が早い反面、規模が大きくなるほど破綻します。配信経路が増え、担当者が替わり、例外対応が積み重なるうちに、記録の粒度が揃わなくなるためです。後者は設計の負担が先に来ますが、あとから範囲を特定できる状態が保たれます。当社が保有する権利の多くは、後者に属する技術に関するものです。

いま確認しておくとよいこと

なお、高リスクAIシステムに関する規則の適用は2027年12月2日へ、規制対象製品に組み込まれるものは2028年8月2日へ、それぞれ延期されています。透明性義務が先行して執行される構図になっています。

自社が対象になるのか、対象だとして何を記録しておくべきか。判断がつかない段階でのご相談を歓迎します。該当性の判断は当社側で行いますので、現在の仕組みをお聞かせいただくだけで構いません。

相談する

出典

欧州委員会「Commission starts enforcing AI Act rules and new transparency requirements」(2026年8月2日)
https://digital-strategy.ec.europa.eu/en/news/commission-starts-enforcing-ai-act-rules-and-new-transparency-requirements-2-august

規則(EU)2024/1689(AI法)第2条 適用範囲

本稿は2026年8月22日時点で確認できた公表資料に基づく整理であり、法的助言ではありません。個別の適用可否については専門家にご確認ください。