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企画は90.7%が「速くなった」、それでも27.4%は「決裁は昔のまま」——420名調査が映す詰まる場所の移動

2026-09-09 AI活用生産性

AIに下書きを頼むようになって、資料が仕上がるのは確かに速くなった。それなのに、案件が前に進む速さはあまり変わっていない——その手応えのなさに心当たりがあるなら、原因は自分の作業スピードではなく、その先にあるのかもしれません。

株式会社ARCHECOが2026年9月7日に公表した「生成AI時代の新規事業開発 実態調査」に、その形がはっきり出ています。対象は、直近3年に新規事業へ関与し、業務で生成AIを週1回以上使っている全国の会社員(正社員)・経営者/役員420名。2万名規模のスクリーニング調査から条件に合う人へ配信し、2026年8月20日にインターネットで実施したものです。

速くなったのは「作るところ」だけだった

企画のスピードが「速くなった」と答えた人は90.7%。内訳は1.1〜1.5倍が35.5%、1.6〜2倍が36.9%、2倍以上が18.3%でした。半数以上が1.6倍以上と答えています。

ところが、同じ人たちに意思決定の側を聞くと数字が反転します。意思決定が「追いついていない」は33.8%(「どちらかといえば追いついていない」29.3%+「まったく追いついていない」4.5%)。企画は速いが決裁は昔のまま、という状態にあると答えたのは27.4%。4人に1人です。

作る速度だけが上がると、詰まる場所が下流にずれる。これは一人の仕事でも同じように起きます。提案書を1日で3本書けるようになっても、それを読んで判断する側の時間は増えていません。出す量を増やした結果、返事待ちの列が伸びただけ、ということが起こる。

分かれ目は「使う量」ではなかった

この調査でいちばん意外なのは、意思決定が追いついている側とそうでない側とで、AIの使用頻度がほとんど変わらないことです。個人が「ほぼ毎日」使う割合は、追いついていない側で52.2%、追いついている側で55.6%。差は3ポイントほどしかありません。

差が出たのは別のところでした。仕事の進め方が「大きく変わった」と答えた割合は、追いついていない側28.7%に対して、追いついている側は50.8%。アウトプットの質が「上がった」は追いついている側で59.8%(全体では46.9%)です。

毎日使っているかどうかは、分かれ目になっていない。使ったうえで、作る以外の工程にも手をつけたかどうかで割れている。ARCHECOの須齋佑紀取締役も、分かれ目が「AIを使う量」ではなかった点を発見として挙げ、書類が速くなっただけの状態と、進め方ごと変えた状態に分かれたと述べています。

増えたのは「それらしい計画」

新たに生じた課題を複数回答で聞いた結果は、個人の実感にも近いはずです。

新たに生じた課題割合
AI利用による人材格差39.5%
情報漏えい・コンプライアンスへの不安25.7%
未検証の「それらしい計画」の増加25.5%
企画の類似化24.3%

「未検証のそれらしい計画」25.5%と「企画の類似化」24.3%は、AIで量を増やしたときに出てきやすい副作用です。形は整っている。けれど根拠が薄い。しかも、似た道具に似た聞き方をすれば、出てくるものも似る。

読む側から見ると、判断に必要な材料が入っていない資料が増えたことになります。決裁が遅いのは、決める人が動かないからではなく、決められるだけの材料が入っていないから、という場合がある。

個人の仕事に置き換えると、手当ては3つ

1. 速くなった工程の「次」を見る。 自分の作業のどこが速くなったかは、たいてい自覚できます。問題はその隣です。下書きが速くなったなら、次に詰まるのは確認と承認。ここに時間が溜まっているなら、次にAIを向ける先は文章ではなく、確認のための材料づくりになります。

2. 出す前に、自分で1回検証する。 AIが書いた根拠のうち、数字と固有名詞だけは自分で出典に当たる。ここを飛ばした資料が積み上がると、次からは中身にかかわらず疑って読まれます。「未検証のそれらしい計画」が増えたと感じている人が4人に1人いる以上、疑いの目はすでに存在しているとみたほうが安全です。

3. 判断の材料を添える。 案/その理由/見送った代案/確認済みの数字と未確認の数字。この4点を短く並べるだけで、相手が返事に使う時間は目に見えて短くなります。実際、外部への依頼内容も「戦略立案・資料作成が増えた」18.3%より「実行・検証支援が増えた」39.8%のほうが多い。求められる比重は、作ることから確かめることへ動きつつあります。

出した量ではなく、通った量を数える

今週書いた提案の本数ではなく、今週通った提案の本数を数える。指標をこれに置き換えるだけで、次に手を入れるべき場所が見えます。

90.7%が「速くなった」と答え、それでも27.4%が「決裁は昔のまま」と答えた。この2つの数字が並んでいることは、速さそのものが成果になるわけではない、という当たり前の事実を思い出させてくれます。作る速度は、もう十分に上がっているのかもしれません。次に上げる場所は、その少し先にあります。

Blue Aegis株式会社は、規制対応を検証可能にする技術を研究開発し、その成果を特許として保有・提供しています。規制対応でお困りの場面がありましたら、判断がつかない段階でもご相談ください。

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一次出典

本稿は公表資料に基づく整理であり、法的助言ではありません。