AIを毎日使う人は「決める立場」に偏る——2万人調査が映す裁量の差
「AIは若い人のほうが使いこなしている」。そう感じている人は多いと思います。ところが8月24日に公表された2万人規模の調査は、少し違う絵を見せています。生成AIを日常的に使っているのは、むしろ役職が上の人でした。
この記事では、その数字を確かめたうえで、差の正体がどこにあるのかを考えます。そして、肩書きが上がるのを待たずに同じ条件を自分でつくる方法を、3つの手順にまとめます。
役職が上がるほど使っている
株式会社ARCHECOが2026年8月24日に公表した「新規事業の生成AI利用 2万人実態調査」は、全国の25〜69歳の会社員(正社員)と経営者・役員あわせて20,000名から回答を得たものです。調査期間は2026年8月17日から19日、インターネット調査です。
このうち、直近3年に新規事業の検討・推進に関わった4,794人(全体の24.0%)を取り出して分析したのが、今回の中心となる数字です。
生成AIを週1回以上使っている人の割合は、役職ごとにきれいな階段を描きました。
| 役職 | 週1回以上の利用率 |
|---|---|
| 一般社員 | 55.4% |
| 係長・主任 | 61.2% |
| 課長 | 71.3% |
| 部長クラス | 75.7% |
一般社員と部長クラスで、20ポイント以上の開きがあります。「ほぼ毎日」に絞ると、新規事業に関わる人全体では33.6%、責任者層では48.9%。責任者のほぼ2人に1人が、毎日AIに触れている計算になります。
新しいツールは若手から広がる、という一般的なイメージとは逆向きの結果です。
差をつくっているのは「決められる範囲」
なぜこうなるのか。調査そのものは理由を断定していないので、ここからは数字をどう読むかという話になります。
役職が上がると変わるものは、いくつかあります。そのなかで、AIの使用頻度に直接効きそうなものを挙げると、自分の判断だけで進められる仕事の量です。
部長が企画の方向性を検討するとき、下調べにAIを使うかどうかは本人が決められます。誰の許可もいりません。一方、一般社員が担当している仕事は、多くの場合すでに手順が決まっています。「この作業をAIに置き換えていいか」を自分で決められる場面は、そもそも少ない。
もうひとつは、扱う仕事の性質です。役職が上がるほど、答えが1つに決まらない仕事——方針を考える、選択肢を並べる、他部署への説明を組み立てる——の比率が増えます。こうした仕事は、たたき台を早く作って何度も直すやり方と相性がいい。AIが効きやすい領域そのものです。
逆に言えば、AIを使う頻度の差は、AIの操作が得意かどうかではなく、そういう仕事を任されているかどうかの差である可能性が高い。ここが重要なところです。操作の巧拙なら練習の問題ですが、仕事の性質は自分の外側にあります。
ただし、外側にあるからといって、動かせないわけではありません。
肩書きを待たずに条件をそろえる3つの手順
1. 許可のいらない領域を先に埋める
自分の裁量だけで完結する作業は、どんな立場にも必ずあります。提出する前の、自分の手元の作業です。
- 資料を作る前の、論点の洗い出し
- 読まなければいけない資料の要約
- 送る前のメールの言い換え案を3つ出す
- 自分の書いた文章に、抜けている観点がないか点検させる
いずれも成果物そのものではなく、成果物にたどり着くまでの途中経過です。ここでAIを使うことに、誰かの承認は要りません。まずこの範囲を埋めきると、週1回が週5回になります。頻度が上がって初めて、指示の出し方の癖もつかめてきます。
2. 「決める仕事」を意識的に引き受ける
手順が決まっている仕事より、決まっていない仕事のほうがAIは効きます。ということは、決まっていない仕事を取りに行くこと自体が、AI活用の準備になります。
大げさな話ではありません。会議で「この件、誰か整理しておいてくれる?」と宙に浮いた依頼が出たとき、手を挙げる。前例のない問い合わせが来たとき、テンプレートを探すのではなく自分で組み立てる。そういう小さな引き受けが、そのままAIの出番になります。
調査で分析対象になったのが「新規事業に関わった人」だったことも、この見方を支えます。手順が固まっていない領域ほど、AIが入り込む余地は大きい。
3. 使った結果を数字で持っておく
裁量を広げる一番の近道は、「この人に任せると早い」と周りに思われることです。そのためには、感覚ではなく数字が要ります。
たとえば、次のような記録で十分です。
- 今週AIを使った作業を、名前つきで書き出す(「議事録の要約」「見積比較の下書き」など)
- それぞれ、以前は何分かかっていたかを思い出して書く
- 今回は何分だったかを書く
- 月末に合計する
数分の作業でも、10件たまれば数字になります。「先月、この5種類の作業で合計4時間ほど短くなりました」と言えるかどうかで、次に任される仕事の幅が変わります。逆に、思ったほど短くならなかった作業が見つかることもあります。それも収穫です。AIを使わないほうが速い作業を捨てられます。
頻度は結果であって、原因ではない
今回の調査から読み取れるのは、AIの利用頻度がその人の仕事の作られ方を映しているということです。毎日使っている人は、毎日「自分で決める場面」に立っている。使う回数が少ない人は、決める場面が少ない。
だとすれば、「もっとAIを使おう」と回数を目標にしても、あまり動きません。動くのは、決める場面を増やしたときです。
まずは手元の作業から。そこで速さの実績を作って、決める仕事を引き受ける。順番としては、これがいちばん確実だと思います。一般社員の55.4%と部長クラスの75.7%を分けているのは、才能でも年齢でもなく、その積み重ねの差です。
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相談する一次出典
- 株式会社ARCHECO(PR TIMES)「【生成AI:2万人調査】新規事業の現場、3人に1人が生成AIを「ほぼ毎日」利用 「若手ほど使う」は逆、利用率は役職が上がるほど高い」(2026-08-24)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000022395.html
本稿は公表資料に基づく整理であり、法的助言ではありません。