AIが並べた比較表を、そのまま稟議書に載せた人65.0%——300名調査が映す、候補を絞る工程の移動
新しいツールを入れることになって、まず「主要なサービスを比較して」とAIに投げる。返ってきた表の体裁を整えて、社内の提案資料に貼る。上司に回す。——このやり方、もう珍しくないどころか、多数派になりつつあるようです。
9月25日に公表された調査が、その広がりを数字で見せています。
選定に関わった人の60.3%が、AIを使っていた
株式会社Iteraが2026年9月25日に公表した調査は、2段構えになっています。
調査①は、全国の23歳〜65歳の就業者5,000名へのインターネット調査。このうち直近1年以内に会社の製品・サービス選定に関わった人は1,219名で、その60.3%が選定の過程で生成AIやAI検索を使ったと回答しました。
調査②は、BtoB商材の選定で実際に生成AIを使った経験がある300名に、使い方を細かく聞いたものです。こちらの数字が具体的でした。
| 項目 | 割合 |
|---|---|
| AIの比較内容を稟議書・社内提案資料に使用した | 65.0% |
| 回答者のうち決裁者または選定担当者 | 57.0% |
| 知らなかった製品をAIから提案された | 63.7% |
| AIの回答をきっかけに候補から外した・変えた | 68.7% |
| 外した・変えたきっかけがレビュー・評判の引用 | 51.0% |
| AIの情報が古い・事実と異なる場面に遭遇した | 27.7% |
使われたAIは ChatGPT 73.7%、Gemini 53.0%、Copilot 29.0%(複数回答)でした。
「調べた結果」ではなく「絞った結果」が動いている
この調査で目を引くのは、65.0%と68.7%が並んでいるところです。
AIに聞いて候補を知り(63.7%が「知らなかった製品を提案された」)、AIの回答をきっかけに候補を外し(68.7%)、残った比較をそのまま社内文書に載せる(65.0%)。しかもその6割近く(57.0%)は、自分が決裁者か選定担当者です。
つまりAIは、調べ物の補助というより、候補を絞る工程そのものに入り込んでいます。下調べをAIにやらせて自分で選び直す、という段取りを想像しがちですが、実際には絞り込みの結果が上流から下流までそのまま流れている割合が高い。
これは効率の面では素直に良い話です。以前なら、比較サイトを5つ開いて、資料請求して、表を自分で組む工程に半日かかっていた。それが1時間で形になる。個人の生産性としては、ここが一番大きく変わった部分でしょう。
27.7%が当たっている「古い・違う」
一方で、同じ調査で27.7%が「AIの情報が古い、または事実と異なる」場面に遭遇したと答えています。4人に1人以上です。
この数字自体は、AIを使っていれば誰でも心当たりがあるはずのものです。問題は、それが65.0%の経路と重なっていることのほうにあります。比較表が稟議書に貼られた時点で、その内容はAIの出力ではなくあなたの提案になります。料金プランが半年前のものだった、すでに提供が終わっている機能だった、と後から分かったとき、説明するのはAIではありません。
候補を外した理由の51.0%が「レビュー・評判の引用」だった点も、同じ方向の話です。レビューは事実とは限らず、いつ書かれたものかも回答からは分かりません。それが選定の分岐点になっていたのなら、根拠としてはかなり薄い。
資料に貼る前に、3つだけ
やることを増やす提案はしたくないので、割に合う範囲に絞ります。どれも5分以内で終わります。
- 数字は一次情報で1点だけ確認する。 全部は無理でも、提案資料に書く価格・プラン名・提供状況だけは公式サイトで見る。ここが崩れると資料全体の信用が落ちるので、費用対効果が一番いい確認です。
- 「外した候補とその理由」も聞く。 AIは残った候補を並べてくれますが、なぜ他が落ちたかは黙っていることが多い。理由を出させると、それが自社の条件に合った判断なのか、単に情報が少なかっただけなのかが見えます。
- 条件を1行足して、もう一度聞く。 従業員規模、既存システム、予算上限。条件を変えて顔ぶれが入れ替わるなら、最初の答えは一般論だったということです。入れ替わらなければ、条件によらない定番だと分かります。
余裕があればもう1つ。比較表の脚注に、出どころを1行残しておくと後で効きます。「2026年9月26日時点、各社公式サイトで確認」と書いてあるだけで、半年後に数字が動いたときの説明がまったく変わります。
数字の読み方に一言
この調査には、押さえておきたい前提がいくつかあります。
調査②は「BtoB商材の選定で生成AIを使った経験がある300名」が対象なので、AIを使わなかった人は入っていません。65.0%は「選定に関わる全員のうち」ではなく「AIを使った人のうち」の割合です。リリースには調査期間の記載がなく、いつ時点の行動かは特定できません。発表元はAI検索領域を事業にしている会社なので、「企業はAI対策をすべき」77.3%といった項目は、そういう立場からの設問だと踏まえて読むのが妥当でしょう。
それでも、調査①の5,000名から出てきた60.3%という広がりと、調査②の使われ方の内訳は、方向として無理のない話に見えます。
比較して並べる作業は、たしかに速くなりました。速くなった分だけ、どの条件で聞くか、どこを自分で確かめるかという工程の比重が上がっている。手を動かす場所が、作るほうから決めるほうへ移っただけとも言えます。移った先に、5分を置いておくかどうか。差が出るとしたら、そのあたりです。
Blue Aegis株式会社は、規制対応を検証可能にする技術を研究開発し、その成果を特許として保有・提供しています。規制対応でお困りの場面がありましたら、判断がつかない段階でもご相談ください。
相談する一次出典
- 株式会社Itera(PR TIMES)「【調査】BtoB商材の選定でAIを使った人の65.0%が、AIの比較内容を稟議書・社内提案資料に使用」(2026-09-25)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000062.000177930.html
本稿は公表資料に基づく整理であり、法的助言ではありません。