生成AIを業務で使う企業は約7割、「ほぼ毎日」は約2割——2,503社調査が映す、頻度と効果のあいだ
「使っている」の中身は、ひとつではない
自分を「AIを使っている人」に数えるかどうかで、少し迷ったことはないでしょうか。アカウントはある。月に何度か開く。でも毎日ではない。
10月1日に公表された調査が、この迷いをそのまま数字にしていました。
株式会社エフアンドエムが2026年10月1日に公表した「中小企業における生成AI活用に関する実態調査」では、生成AIを現在業務で利用している企業は約7割。一方、ほぼ毎日利用している企業は約2割にとどまり、最も多かったのは「月に数回、必要な時だけ」のスポット利用でした。
同じ「利用中」の中に、毎日の人と月に数回の人が同居しているわけです。発表元も、約7割という数字には「一部の人が個人的に使っている企業も多く含まれている」と書いています。自由記述にも「一部従業員は毎日のように利用しているが、使わない人はほとんど使っていない」という声がありました。
毎日の層と月数回の層で、効果の実感が倍近く違う
この調査でいちばん目を引いたのは、利用頻度で回答が分かれた部分です。
| ほぼ毎日利用 | 月に数回利用 | |
|---|---|---|
| 業務の質の向上を実感 | 約9割 | 5割台半ば |
| 労働時間の削減を実感 | 6割台半ば | 4社に1社 |
| 有料ライセンスの利用 | 約7割 | 約2割 |
効果の実感が、だいたい倍近く開いています。有料版かどうかの差も同じ向きです。利用の中心は無料の汎用テキスト生成AIで、用途はメール・報告書の作成が6割超、経営判断の参考や壁打ちが5割弱でした。
ここで「やっぱり毎日使えば効果が出るのか」と読みたくなります。でも、その読み方には発表元自身が注意を付けています。
発表元が置いた、ひとつの留保
レポートのまとめには、こう書かれていました。
本調査は一時点の結果であり、利用頻度と効果の関係を示すものである。頻繁に使うから効果が出るのか、効果が出たから頻繁に使うようになったのかまでは判断できない点に留意が必要である。
調査を出した側が、因果の向きを断定していません。数字の価値を下げる注記ではなく、読み手が間違えやすい場所を先に示したものだと受け取りました。
実務の感覚としては、たぶん両方が同時に起きています。1回使って手応えがあった仕事には次も使い、なかった仕事には二度と使わない。頻度は原因でもあり結果でもある。
そう考えると、頻度を目標にするのは順番が逆になります。「今週は5回使う」と決めても、手応えのない5回は次につながりません。先に決めるのは回数ではなく、どの1つの仕事で手応えを確かめるかのほうです。
壁は費用でもリスクでもなく「使い道」
もうひとつ、はっきりした結果が出ていました。
利用を停止した企業と、一度も利用したことがない企業——その双方で最も多かった理由は「どの業務に使えばよいか、具体的なイメージが湧かない」でした。費用やリスクを挙げた企業はわずかだと報告されています。利用中の企業でも、課題の2番目は「運用の型がわからない」でした。
注目したいのは、リスク意識の出方です。情報漏えいなどのリスクは、利用中の企業では最も多い課題でしたが、未導入の理由として挙げた企業はごくわずかでした。つまりリスクが見えてくるのは、使い始めてからなのです。
これは個人にも当てはまります。使う前に心配していたことと、使い始めてから本当に困ることは、たいてい別物です。先に悩み切ろうとすると、悩みの対象が実物からずれたまま時間が過ぎます。
課題の中身が変わったら、進んでいる
同じ調査で、課題の内容も頻度によって違っていました。
- ほぼ毎日利用する企業:情報漏えい・著作権のリスク、出力内容の確認・修正の手間が上位
- 利用頻度が低い企業:「どの業務に組み込めばよいか」が上位
並べると、課題が消えたのではなく入れ替わったことが分かります。自由記述の「できることが増えて逆に仕事が増えている」という声は、その移動を正直に言い表したものでしょう。
使い込んだ先に待っているのは「困らない状態」ではありません。困る場所が、使い道探しから、出てきたものの確認へ移るだけです。ただ、後者は手元に成果物がある状態での悩みなので、進んだ証拠として扱っていいと思います。
この数字の範囲について
調査対象は、エフアンドエムクラブ会員企業。有効回答数は2,503社で、調査期間は2026年7月1日から7月31日までです。設問に応じて単一回答と複数回答が設定され、未回答は集計対象から除外されています。
注意点が3つあります。まず、これは企業単位の調査です。会社としての利用頻度を答えているので、個人の使い方の分布とは一致しません。次に、母集団は発表元のサービス会員企業で、中小企業全体の平均ではありません。そして公表値は「約7割」「6割台半ば」といった概数なので、細かい比較には向きません。
それでも、頻度によって効果の実感と課題の中身が揃って変わるという構造は、個人の実感とも重なります。
明日からできる3つのこと
- 「必要な時だけ」になっている仕事を1つ選び、次の1回を予約する。 月に数回で止まっている領域が、たいていいちばん伸びます。やみくもに回数を増やすより、手応えを確かめる対象を1つに絞るほうが早いです。
- 有料版を検討するなら、無料で詰まった具体例を2つ書き出してから決める。 この調査では毎日使う層の約7割が有料版でしたが、順番は「よく使うから払った」である可能性が十分にあります。詰まった例が書けないうちは、まだ判断材料が足りていません。
- 自分の「困りごと」がどちら側かを確かめる。 使い道が思いつかないのか、出てきたものの確認に時間がかかるのか。前者なら用途を1つ決めるところから、後者なら確認の手順を短くするところからです。打ち手がまるで違います。
利用率が約7割まで来た今、差がつくのは使っているかどうかではなくなりました。ただ、その差を「毎日使えば埋まる」と単純化しないほうがいい——調査を出した側が因果に留保を置いたのは、そういう読み方への注意だったように思います。
Blue Aegis株式会社は、規制対応を検証可能にする技術を研究開発し、その成果を特許として保有・提供しています。規制対応でお困りの場面がありましたら、判断がつかない段階でもご相談ください。
相談する一次出典
- 株式会社エフアンドエム(PR TIMES)「中小企業における生成AI活用に関する実態調査」(2026-10-01)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000157.000029825.html
本稿は公表資料に基づく整理であり、法的助言ではありません。